魂柱の木目は表板の木目と直交する向きにセットします。もちろんこれにもちゃんと理由があります。
まず1つは、魂柱と表板の冬目を確実に接触させることです。冬目というのは年輪の濃い部分のことで、組織が密になっているため振動の伝達性が高いのです。
木目を平行に設置してしまうと、表板と魂柱の年輪間隔が全く同じで、魂柱の立てる位置でぴったり冬目を一致させることができればおそらく最高のパフォーマンスを期待できるのでしょうが、そのような都合を追い求めていてはいくら材料があっても足りません。また、冬目と夏目が平行に接した状態では、硬い冬目が柔らかい夏目を削ってしまい、特に表板に大ダメージを与えてしまいます。
それに対して、木目を直交させる場合は木目の幅や設置する位置に関わらず確実に硬い冬目同士を接触させることができます。
そして、もう1つの理由は半分推測ですが、木材の伸縮による影響を最小に抑えるためと考えられます。
木材は湿度変化により伸縮する性質がありますが、全ての方向に同率に伸縮するわけではなく、木の円周方向(板目材の幅方向、柾目材の厚さ方向)が最も大きく変化することがわかっています。
表板と魂柱の木目を平行に設置してしまうと、伸縮により魂柱のはめ込み強さが大きく変化したり、伸縮を繰り返すことによって魂柱の位置が変わってしまうと考えられます。
魂柱を立てるには魂柱立て(サウンドポストセッター)という道具を使用します。
尖っている側を魂柱の「夏目」に刺してE線側のf字孔から挿入します。
f字孔から挿入したら、そのまま楽器の中央付近まで持っていき、その位置で魂柱が縦になるまでセッターをゆっくり立てていきます。そしてセッターを手前に引っ張ると上下の板に魂柱が引っかかり自立します。
魂柱を立てること自体は大して難しくありません。うまく立たないとしたら魂柱の長さや、表板裏板との接触面が合っていないはずです。
この状態でエンドピンの穴から覗くと↓こんな光景が見えます。
エンドピン穴から覗く |
ここからが魂柱立ての本番、サウンドポストセッターを逆に持ち替えて魂柱の位置を微調整していきます。調整する要素は次の通り。
・魂柱の縦位置
・魂柱の横位置
・はめ込み強さ
・表板裏板との接触面
これらをエンドピン孔やf字孔からの目視、ミラーによる目視、セッターから伝わる感触を頼りに調整します。上の4つの要素が1つでも合わなければ、魂柱を取り出して削り、再び箱の中に立てて状態を見るということの繰り返しになります。
だいぶ合ってきました |
魂柱と表板との接触具合を確かめるために デンタルミラーの柄を細く削ってf字孔から覗きます。 |
最終的な調整はいちばん最後に音を聞きながら行うので、ここでは概ね目的の位置に魂柱をセットできたら作業完了です。
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