ホワイトヴァイオリンのセットアップ 目次 |
駒を削ることについては過去に同様の作業をしたのですが、その時にはあくまでも駒のコピーを作っただけした。今回は元になる駒は当然存在しないので、楽器の寸法に合わせて高さやカーブを調整することになります。
今回使うのは前回と同じくデスピオ社のシュペリエル3ツリーです。繊維の密度、軽さ、硬さ、乾燥度合とどれも非常に優れた品質だと思います。
毎度お馴染み!?デスピオの駒 |
駒のセットアップをするときは必ず魂柱を立ててから行います。魂柱を立てることで表板の高さや角度が変わるためです。
まずは例によって足元の合わせからです。表板のf字孔の間に駒を仮置きして、カーブに平行にけがき線を入れます。そして彫刻刀を使ってこの線まで削っていきます。
前回は数日かけてちまちま削っていた記憶がありますが、やはり経験済みというのは強く、ものの30分程でピッタリ合いました。
次は上面のアーチ作りです。ここは前回のようにコピーを作ればいいわけではないので、楽器本体に合わせて駒の高さを決めなければいけません。その基準となるのがG線とE線の高さです。
まずはG線とE線の横位置を決めてしまいます。G線からE線までの間隔は一般的なモダン仕様4/4サイズでは34mmと決まっています。というわけで、駒の中央に縦に線を描き、そこから左右17mmの位置に平行に縦線を描きます。下の写真、若干見辛いですが、この左右の縦線上にG線とE線が乗るようになります。
指板側の面は削ってしまうので、直接描いてしまいます。 |
続いてこの駒を楽器にセットします。そしてナット溝から指板端の延長と先程駒のG線E線の横位置として描いた線のぶつかるところに印をつけます。30cm定規を使うと丁度良い長さで使いやすかったです。
ここは慎重に・・・ |
この印の位置からE線側は3.5mm、G線側は5.5mm上にさらに印を付けます。この印の場所が実際に弦の通る位置となります。
この2点が決まってしまえば駒の形状は決まったも同然です。駒のアーチ半径は39mmと決まっているので、この2点を通るように半径39mmの円弧を描きます。この時、G線E線の外側まで同じR39mmで描いてしまうと間の抜けた形状の駒になってしまうので、そこはRを緩やかにして自然にカーブを落とす感じにします。
厚紙で半径39mmのテンプレートを作っておくと便利 |
この円弧に沿っていらない部分を切り落とします。この作業も前回は切れない糸鋸を使ってえらく苦労した記憶がありますが、今回は電動ドリルで円弧に平行にたくさん穴を開けて、穴の間を彫刻刀でサクサクと潰していったら、ものの10分もかからず綺麗に成形できました。
これで面方向の加工は(基本的な部分は)終わりなので、続いて厚さ調整を行います。
この厚さについても色々考え方があると思うのですが、私の考えとしては、駒というのは振動の通り道であるので、振動を分散させないように可能な限り薄くするのが理想であります。しかし薄くするということはそれだけ剛性が落ちることにもなり、振動の伝達効率が悪くなります。
その加減については正直何とも言えませんので、ここではごく標準的に上面1.5mm、足元4.5mmを目標に加工しました。
脚側加工前5.67mm |
頭側加工前3.33mm |
脚側加工後4.49mm |
頭側加工後1.51mm |
厚さが決まったら上面に弦を通す溝を彫ります。この辺りはもう完全に前回の作業と同じですね。
あとは無駄な部分をそぎ落としていきます。主なポイントは足元、左右のエッジ、孔内部といったところです。強度を保ちつつ軽量化していくこの作業、昔やったミニ四駆の肉抜き軽量化を思い出します。
この作業結構好きです |
最後にE線の溝上にパーチメントを貼り、全体を細かい目のサンドペーパーで軽く磨けば完成です。前回は仕上げにリンシードオイルで磨き上げましたが、今回は白木のままにしてみます。
駒が完成! |
これで駒も完成。ついにヴァイオリンの完成も目前です。
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