本来は工房で楽器に合わせて調整してもらうものですが、失敗したら今までの駒を使えばいいし、ということで自分で加工してみました。
今回購入したのはデスピオ(Despiau)のシュペリエル(superieur)3ツリー。オーベルト(Aubert)のデ・ラックス(De Luxe)と迷いましたが、デスピオの方が硬質な音との評判なのでこちらを選びました。
加工前のデスピオ シュペリエル |
今までの駒を取り外しデスピオの未加工駒を仮置きします。かなり高さもあるし、足元も隙間ができています。これからこの楽器に合わせて加工していきます。
未加工の駒を仮置きする。指板からの弦がかなり高い。 |
足元の加工
楽器の丸みに合わせたケガキ線を引き彫刻刀で削っていきます。
写真は撮っていませんが、仮置きした駒の横に磁気カードやトランプのような硬めのカードを何枚か重ねて置くと簡単にケガキ線が引けます。
ちなみに、ヴァイオリンの表板にサンドペーパーを敷いてそこに駒の足を擦り付けるという方法もありますが、たとえ精密機械のように駒を垂直に立てて作業したとしても足が密着することは無いのでお勧めしません。
ケガキ線を目標に彫刻刀で少しずつ削っていく。 |
再び仮置き。足元の隙間が無くなるまで合わせては削り合わせては削りの繰り返しです。
足元の隙間が無くなりました。 |
アーチの作製
続いてアーチ部を加工します。
アーチの半径が39mmですとか、指板からの弦の高さ等色々と気を使う部分なのですが、特別なこだわりが無い限りは今まで使っていた駒の高さとカーブをコピー(2枚を重ねてケガキ線を引く)するのが無難でしょう。ただしその場合、旧駒の歪みを考慮に入れる必要があります。私の旧駒は左右の偏りは無く全体的に後ろに反った状態でしたので、カーブ形状はそのままに、全体的に0.5mm程度高くケガキ線を引きました。
旧駒(右)より0.5mm高くケガキ線を引いた。 |
駒を完全に外している間は魂柱の転倒防止の為にコルクブロックを挟んでいます。 |
ケガキ線を引いたら線から1~2mm程度の余裕を持って糸ノコで切り落とします。そして足元の加工と同じように彫刻刀で削っていきます。足元のような超精密作業は必要ないのでそれほど難しくありません。
厚さの調整
アーチ加工が終わったら、次はサンドペーパーで厚さを削ります。今までの駒を参考に足元4.5mm、トップ1.5mmにしました。やってみるとわかりますが、平面に削るとトップの厚みが揃わないので丸く削る必要があります。こまめに厚さを測定しながら削るようにしましょう。
厚さ削り。簡単そうに見えて意外と難しいです。 |
溝彫り
ヤスリで弦が通る溝を彫ります。溝の位置も決まった寸法がありますが、やはり旧駒からコピーするのが一番無難でしょう。また、溝の深さは弦が乗った時に1/3程度食い込んだ状態がベストですので、当然G線とE線とでは溝の幅だけでなく溝の深さも異なってきます。溝を彫ったら最低限の作業は完了。 |
その他の加工
サイドの角や孔の中、足の厚みなど剛性に影響の無いところを削って軽量化していきます。軽量化することでレスポンスが良くなります。 |
E線の食い込み防止の為にパーチメントを貼ります。
ニカワで貼るのが理想だとは思いますが、剥がすことも無さそうなので(劣化したら削り取ればいいので)タイトボンドを使いました。それでも使う量は爪楊枝の先程度。大量に余ります。
E線の食い込み防止の為、パーチメントを貼る。 |
仕上げ
全体(足裏以外)を目の細かいサンドペーパーで磨き、リンシードオイル(亜麻仁油)で表面を仕上げます。
塗り過ぎると内部に染みこんで駒が重くなってしまうので、1回塗りで充分だと思います。
リンシードオイルで表面仕上げ。 |
完成
そしてついに完成!評判通り硬質な音で、反応もかなり良くなりました。テールピース側から。 |
指板側からもう1枚。 |
購入品(道具・材料)リスト
駒(デスピオ) ・・・・・・・・3120円
パーチメント ・・・・・・・・・ 100円
彫刻刀5本組 ・・・・・・・・ 930円
ヤスリ5本組 ・・・・・・・・・ 467円
サンドペーパー ・・・・・・・ 557円
デジタルノギス ・・・・・・・ 980円
コルクブロック ・・・・・・・ 945円
リンシードオイル ・・・・・ 330円
タイトボンド ・・・・・・・・・・ 718円
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合計 ・・・・・・・・・・・・・・・8147円
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