2013/06/01

弦の交換時期について


弦の交換タイミングについては、使用する弦の銘柄や演奏者の考え方によって様々です。どのような時に弦を交換するのが最も理に適っているのでしょうか。





限界まで交換せずに使い続ける

まずはこのパターンです。「切れるまで使い続ける」「巻き線が剥がれてきたら交換する」というのが該当します。弦は決して安いものではありませんし、大きな問題が無い限りは使い続けたいと思うのはある意味自然なことと思います。最近の弦は非常に丈夫になりました。1年以上張りっぱなしでも切れる気配すら感じないものすらあります。

ただ、やはりこの方法ではとりあえず音を出すことができる以上のクオリティは保てない訳で、演奏会等の本番はもちろんのこと、練習も満足にできるとは言い難いです。この方法で良いのはめったに使わない予備用のサブ楽器くらいでしょう。



期間を決めて定期的に交換する

人によってその期間は様々です。3ヶ月で交換する人もいれば、半年で交換する人もいますし、プロの演奏家の中には1週間で張り替えてしまう方もいるそうです。
この方法では交換インターバルに応じたある一定のクオリティを保つことができます。しかし、保管環境(温度・湿度)や練習頻度、弾き方の癖でそのクオリティは大きく変化します。ある人が3ヶ月毎に交換しているからといって他の人が同じ弦を同じ3ヶ月で交換したとしてもその劣化具合は異なるわけです。
金銭的にも余裕があって週に一度交換しているというのであれば否定しようが無いですが、期間が数ヶ月に及ぶのであれば本当にその期間が適正であるかを見極める必要があると思います。



演奏会本番を見据えて交換する

これを実践している方はかなり多いのではないでしょうか。本番は最高のコンディションで臨みたいですし、新しい弦を使用することで本番中に弦が切れるリスクはかなり下がります。

気を付けなければいけないのは弦の初期伸びです。弦の銘柄によっても異なりますが、張り替えて数日は弦が伸び続けるため音程が安定しません。安定するまでに要する日数はドミナントで2~3日と言われていますが、1週間は余裕を見ておいた方が良いでしょう。

また、練習時にはずっと古い弦を使ってきて本番だけ新しい弦というのもいかがなものかと思います。弦交換により音の良し悪しは別としても、楽器から体に返ってくる反応が変わってしまうので、その差があまりにも大きいと別の楽器を弾いているような感覚になってしまいます。本番前の弦交換は結構なことですが、あくまでも普段からの弦のコンディション維持あってのものです。



音を頼りに交換する

そもそも何故弦を交換するかというと、弦が劣化してきて発音が悪くなったり音の伸びが無くなったり音程のツボがずれたりするからです。ならば、その許容範囲を超えたら、あるいは超えそうになる前に交換すればいい、わからないのならば交換する必要は無い、というのがこの交換の考え方です。
これは最も本質を捉えた判断と言えますが、問題は弦の劣化が非常に緩やかに進むため、その変化に気付きにくいことです。

弦の劣化の主原因は伸びです。偏った伸び方をすることで音程のツボがずれますし、伸びによって線密度が下がったり、芯材と巻き線との一体感が無くなることで倍音が貧弱になったりします。こうした現象を簡易的に判断する方法を紹介します。

 ・様々なポジションで5度の重音を弾く
  通常の押さえ方で5度の音程が取れない場合は伸びの偏りが進行しています。

 ・弦を指ではじいて余韻を聞く
  はじいた瞬間と余韻の音程が異なる場合は交換時です。

 ・4倍フラジオ(自然&強制)を鳴らしてみる
  劣化しているとフラジオが鳴らしにくくなります。

 ・消音ミュートを装着して弾く
  消音器をつけて共鳴音を抑えることで弦の音が聞こえるようになります。つけていない時と比べて音程がわかりにくくなるようであれば劣化が進んでいます。

といった方法で劣化の進行がある程度分かりやすくなります。
また、音で判断する上で非常に重要なことはその判断基準を持つということです。すなわち新品の弦を張った時の音の輝き・ハリ・反応の速さを体で覚えておく必要があります。そのためには弦の交換は4本同時に行うのが良いでしょう。(作業は1本ずつ行うようにしてください)


どの方法が一番か

最初にも述べましたが、何をもって弦を交換するかは使用する弦の銘柄や演奏者の考え方によって様々ですし、ここで紹介した考え方もそれぞれメリット・デメリットがあるので、絶対この方法と言うことはできません。しかし弦交換の目的が音質の改善であることは言うまでもありません。まずは新しい弦と劣化した弦の感覚を身につけるところから始めてみてはどうでしょうか。





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