2014/03/15

ニス塗り その1


ホワイトヴァイオリンのセットアップ 目次

いよいよニス塗り開始です。

ヴァイオリン用のニスは、大きく分けてアルコールニスとオイルニスがありますが、私はオイルニスを選択しました。ストラディヴァリの時代はみんなオイルニスだとか、柔らかいニスが音に云々、とよく言われていますが、私がオイルニスを選んだのはそのようなことからではありません。







アルコールニスとオイルニスにはそれぞれメリットとデメリットがあります。


アルコールニスとは文字通りアルコールに各種樹脂や染料・顔料を溶解したものです。塗布後、アルコールが気化蒸発することで、それまで溶けていた樹脂等が残留し被膜となります。
このニスの特徴は次の通りです。

・常温で多種の材料を溶解できるため、製造が簡単
・乾燥が早く、塗装工程を短くできる
・重ねて塗る時に下の層が溶けてしまうため、ムラになりやすい


オイルニスは揮発油であるテレピン油や乾性油であるリンシード油に成分を溶解したものです。テレピン油はアルコール同様に気化蒸発する性質がありますが、リンシードやウォルナット等の乾性油は酸化重合することで固化する性質であるため、乾燥するまで非常に時間がかかります。
このニスの特徴は次の通りです。

・溶解できる物質が限られている
・乾燥が遅く、塗布跡が目立たない
・重ねて塗る時に下の層が溶けないため、ムラになりにくい






すなわち、私がオイルニスを選んだ理由は、塗りの技術が無く、時間はある(特に急いでいない) からです。
しかし、オイルニスなんてアマチュア個人レベルではそうそう作れるものではありませんし、作ったとしても満足のいくものにはならないでしょう。やはりここはプロの力を借りるべきと考え、(有)日本リノキシン様より購入しました。


日本リノキシン様より購入したのはViolin Varnish Classicalのイエローとブリックレッド、そして希釈用のテレピン油、研磨用のトリポリ粉末です。



塗装

まずは黄色いニスから塗っていきます。このニスはそのままでも塗れるようですが、かなり粘り気が強いのでテレピン油で薄めて塗ります。

ニスの原液。粘性も高く、色も黄色というよりタールですね。

テレピン油で薄めた(薄めすぎた)のがこちら。黄色がよくわかります。



アルコールニスでは何回も刷毛を往復させるのはNGですが、このオイルニスはまんべんなく塗るために、むしろ何回も刷毛を往復させたほうが良いようです。気を付けるべきことといえば、(アルコールニス同様)刷毛にニスを含ませすぎないことと、刷毛をグシャグシャ動かして気泡を発生させないことくらいでしょうか。

一回塗り後。

乾燥

まんべんなく塗り終えたら充分に乾燥させます。オイルニスは乾燥が非常に遅く、最低でも1週間はかかります。そのため、乾燥場所には細心の注意を払う必要があります。

①埃の立ちにくい場所
乾燥の遅いオイルニスにとって一番の大敵はホコリでしょう。せっかくきれいにニスを塗ってもそこに埃が大量に付いてしまうと台無しです。あまり立ち入らない部屋を綺麗に掃除した上で、空気清浄器を動かす等、対策が必要です。また、埃といえども重さがあるので、同じ部屋なら低い場所より高い場所の方が埃の数は少なくなります。天井から吊るしておくのも一つの手です。

②風通しの良い場所
いくら埃が立たないからといって密閉された狭い空間に閉じ込めると乾燥は遅くなります。オイルニスが乾燥するためには、テレピン油の揮発と乾性油の酸化重合というプロセスを要するからです。風が吹き抜けるような場所は前述の埃の問題がありますので、自然に空気が入れ替わるような場所がベストです。

③明るい場所
紫外線を浴びることでオイルニスの乾燥硬化がより促進されます。かと言って直射日光に当ててしまうと赤外線による熱で楽器に歪みを生じてしまいますし、ニス内に残留したテレピン油が急激に気化し気泡が発生します。最悪でもレースカーテン越しがいいところでしょう。ちなみに、製作家の中にはブラックライトを使用する方もいるそうです。



塗装の研磨

塗布→乾燥を何回か繰り返していくと、次第に表面に凹凸が出てきます。これを適宜サンドペーパーで磨いて均す必要があります。毎回塗装の度に研磨する人もいれば、色の変わり目や最終仕上げのみ研磨する人もいるようです。私はだいたい塗装2~4回に研磨1回のペースでやっています。

ニスの研磨にはサンドペーパー#600~#1500を使います。直にペーパーを当ててしまうと研磨ムラができてしまいますので、ここで潤滑剤としてオイルや石鹸水を使用します。オイルはよほど粘性が強いものでない限り特に何でもいいと思います。ちなみに私はリンシードオイルを使用しています。これなら最後に少々拭き残ったとしても、次のニスの乗りに大きな影響が無さそうだからです。

オイルを指でニス面に塗り広げ、ペーパーを使って軽い力で磨いていきます。ペーパーの番号を上げる時(#600→#1000等)は必ずそれまでのオイルをきれいに拭き取ります。そうしないと低い番号の研磨粒子が残留し、大きな傷を付け続けることになります。

#1500まで磨きが完了すると全体的に平滑だけど曇ったニス面になります。
7回黄色ニスを塗って磨き上げた状態




黄色はそろそろ充分なので、次は色を替えて塗装を続けます。

道具・材料リスト

オイルニス黄(日本リノキシン)・・・・・・・・・4000円
テレピン油・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1404円
耐水ペーパー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 539円






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