2013/03/24

駒の位置調整


駒は適正な位置にしっかり立っていることでその能力を発揮できます。駒の位置が1ミリもずれると音色に大きく影響しますし、正しい音程も取りづらくなります。
調弦や練習で駒の位置・角度は少しずつずれていきますので、こまめにチェックするようにしましょう。




①横位置のチェック


まずは写真のように渦巻き側から見てください。

指板の左右の角ラインと比べてみてどちらかに偏っていないことを確認してください。もっとも意図的に動かしていなければ横方向に偏るということはあまり考えられないので、多くの場合は問題ないでしょう。



②縦位置のチェック


次に正面から駒を見てみましょう。

駒の正しい縦位置は「左側F字孔の切欠きの位置」というのはヴァイオリン弾きにとっては常識ですが、では切欠きを駒のどこに合わせるかというと曖昧だったり間違って覚えていたりという人が多いように思います。

F字孔の切欠きに合わせるのは駒の上端、弦が接する指板側のラインです。ただ、目視でこのラインの位置を合わせようとすると、見る角度によってずれているようにも合っているようにも見えたりして、非常に困難です。
やはり駒の縦位置は足元を見て合わせるのが簡単です。駒の細かい寸法の話は省略しますが、足元の厚みの中央より気持ち後方にF字孔の切欠きが合うように調整するとほぼ正確な位置となります。


③傾き・そり返りのチェック


真横から駒を見てみてください。

正しい駒の立ち方は写真のようにテールピース側が表板に対して垂直になっている状態です。また、この面が真っ直ぐもしくはテールピース側に極僅かに反っているのが健康な状態です。
通常使用している分には駒が大きく傾いたり反り返ったりということは無いのですが、注意した方がいいのは弦の交換時そしてL型アジャスターを使っている場合です。

弦の交換時には新しい弦を規定の張力まで巻き上げるので、摩擦力で駒も指板側に引っ張られることになります。また、交換後も初期伸びにより音程が下がる為、更に弦を巻くことになります。途中で気付けばいいのですが、気付かずに巻き続けると最悪の場合駒が倒れて駒や表板を破損したり魂柱を倒してしまう恐れもあります。

次に、L型アジャスターとは写真のような大型のアジャスターです。

非常にチューニング幅が広く、ペグでのチューニングに慣れていない場合は重宝するアジャスターです。その反面、チューニング幅の広さが駒にとっては災いとなってしまいます。
例としてペグとL型アジャスターそれぞれで半音上げることを想定してみましょう。音の高さは上ナットと駒間の弦の張力で決まりますから、ペグを使用した場合もアジャスターを使用した場合も弦を引っ張る長さは同じになります。しかし、ペグの場合は駒から大きく離れた所で弦を巻くわけですから、駒付近の弦は僅かしか移動しないのに対し、アジャスターで引っ張った場合は駒までの距離が非常に近いために、駒上での弦の移動量が非常に大きくなります。その結果摩擦力で駒がテールピース側に引っ張られて傾きや反り返りを招きます。
さらに駒上での弦の移動量が大きいということは駒の溝が磨耗しやすいことも意味します。そして重量増加による音エネルギーの損失、巻きすぎによる表板への接触等、このタイプのアジャスターを使うことのデメリットは大きいです。一刻も早くペグでのチューニングに慣れて、E線のみHillタイプなどの小型のアジャスターを使用するのが賢明と思います。

話が脇道に逸れてしまいましたが、駒の傾きや反りはこのようにして生じます。駒が反ったまま使い続けていると反りが戻らなくなり駒交換というはめになります。


④駒の調整の仕方


以上のチェックで駒のずれを発見したら正しい位置・角度に修正しましょう。
修正する時は安定した姿勢・安定した持ち方が鉄則です。まず安定した椅子に腰掛けて膝から太ももの上にヴァイオリンを置いてください。手のひらをヴァイオリンの表板に添えつつ親指と人差し指中指で駒を挟んで持ってください。

そして指先にゆっくり力を加えて駒の位置を調整します。腕に力を加えるのではなく、指の力だけで動かすのです。
少し弦を緩めると動かしやすいですが、調整後に弦を再び弦を張るとその分駒が傾くので、その分の調整も忘れないようにしてください。



駒は正しい状態で使えば10年以上余裕で使えるものです。こまめにチェックして余計なトラブルや出費は避けたいですよね。




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