2013/06/29

弦を緩めるということ


ヴァイオリンを弾き終わった後、弓の毛は緩めますが弦は基本的には緩めるものではないと言われています。弦を緩めることによって駒や魂柱が本来の位置からずれてしまったり倒れてしまう恐れがあるためです。




しかし、弦を緩めることのデメリットとはそれだけなのです。さすがに駒を倒してしまうと楽器に大ダメージを与えかねませんが、弦を緩めて置いておくだけで致命傷を与えるとは考えにくいです。


逆に弦を強く張ったままにしておくことでの弊害は大きいです。弦の張力は4本合計で20kg以上にもなりますし、駒にかかる垂直方向の荷重も10kg近くになります。これだけの力がかかるわけですから当然のことですが、弦を張っているだけでヴァイオリンは歪んでいきます。

しかし、木材には復元力というものがあります。一時的に大きな力で歪んだとしても、元の形に戻ろうとする性質です。つまり弦を緩めておくことで楽器の歪みをある程度緩和することが期待できます。


というわけで、毎日ヴァイオリンを弾く人には弦を緩める必要性はあまり無いと思いますが、私のように土日しか弾かないであとは置いたままという人であれば、弦を緩めて置いておくことをお勧めします。



弦を緩める時の注意点

①弦を緩め過ぎない

今回の趣旨として究極的には、弦を完全に取り外してしまうことが最も効果的ということになってしまいますが、魂柱を倒してしまっては元も子もありません。また、いざこれから弾くという時に手間がかかってしまい、弾くまでの精神的ハードルが上がってしまいます。
現実的には本来のチューニングより5度下げ程度がいいところでしょう。つまり低い方から順に「GDAE」となっているものを「CGDA」とヴィオラ並みのピッチまで下げます。5度下げ程度では大して負荷は変わらないのでは、と思うかも知れませんが、理論的にはこれだけでヴァイオリンにかかる負荷は元の2/3になります。



②駒の傾きに注意

弦を5度緩めるということは、弦が全体的にテールピース側に移動します。さらに弦の張力が弱まることでテールガットが縮み、テールピースが駒から離れる方向に移動します。これにより駒はテールピース側に傾いてしまいます。いくら弦の張力が弱いとはいえ、このまま置いておくと駒に歪みを生じることになりますので、必ず垂直に立つように修正するようにしましょう。また、この際には通常よりもかなり弱い力で駒が動いてしまいますので力加減は注意してください。
そして、再び元のピッチに戻す時にはこの逆の動きで駒が指板側に傾くのでこちらも注意が必要です。



③弦を緩めたまま持ち歩かない

弦を緩めることにより、魂柱を挟む力もその分弱くなります。とは言え、魂柱は弦を完全に緩めた状態でもある程度の力で挟まれているので、少し動かしたり傾けたりした程度ではびくともしませんし、安全なところに保管するならばまず心配は要りません。
しかし、外へ持ち出すとなると話は別です。最近のケースは手で持つだけのものよりも、リュックの様に背負って持つタイプが主流ですが、ケースを肩に担いで歩くだけで楽器にはかなりの衝撃がかかりますし、慣れるとケースの存在を意識しなくなり、不意に人や物にぶつけてしまう可能性もあります。



私は半年ほど前から弾かない時には弦を緩めています。楽器の歪みについてもそうなのですが、弦自体も通常より長持ちする傾向があるようです。週末ヴァイオリニストの方は試してみては如何でしょうか。






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